もう「恋」は始まっている・・・
ー 恋 ー
押し付けられるように渡されたポートフォリオを捲った。正直、何も期待していなかった。そして、その期待は裏切られる為に存在していた。写真が「無」だった・・・白、水色、ピンクにイエロー・・・「色」はある。ただ、ただ写っている少女達が「居ない」のだ。そう、「透明な世界」がそこに写し出されていた。衝撃だった。衝撃的だった・・・そして彼が言った。
「最後の一枚が自信作なんですよ。」自信満々に彼がページを捲った。そこには「走る少女の後ろ姿」が写っていた。その時だ、私の体の中を何かが走り抜けた。

「この人は私と一緒だ・・・」

それからの時間は、私にとっては人生初めての時間だった。彼が好きな写真家、彼が好きな映画、彼が衝撃を受けたという舞台・・・そしてわかった事。

人を好きになるのに時間はいらない。

もう、「恋」は始まっている・・・
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