Pair key 〜繋がった2つの愛〜

「松元さん……」

「……なんだ」

「わたしのこと、好き?」

「…………」

「好きなんだよね?」

「…………」

「好きって言ってくれないと、また泣いちゃうよ?」

「……勝手にしろ」

「意地悪……」


言って胸は温かだった。わたしはのそりと起き上がってクッションを手放し、松元さんの首に腕を回して抱きついた。
こういうスキンシップを自分からするのは、とても久しぶりだと思った。


「松元さん、意地悪だけど、大好きだよ……」


彼の耳元に囁いた。


「一言余計だ……」


そう言ってわたしの腰を片腕で引き寄せて、傾いた身体を抱き締めながら支えてくれる腕は優しいけれど、力強い。
松元さんの匂いが鼻腔をくすぐり、松元さんの鼓動がわたしの胸に重なるように響く……
込み上げた愛しさと安堵感が重なって膨らんだ幸福感が、ふいに彼の名前を呼ばせる。


「俊哉さん……


……って、呼んでもいいですか?」


腕の力が少し抜けたことで距離ができ、彼の表情を窺い見ると……滅多に見せない、蕩けるような優しい笑顔を浮かべていた。
久々に見た、彼の幸せそうな笑顔に心奪われ、わたしは何も言えずにただボーッと魅入ってしまう。

そうしてだんだんと互いに近づいて、そっとキスを交わす。
柔らかく温かで、愛しい。触れるだけの優しいキスが、だんだんと深まってゆく……

俊哉さん……と呟いて、それから目眩く心地のする二人の世界に没頭した。

随分と長いこと御無沙汰だった濃厚なキスが、付き合い始めの頃を思い出させる。
いつの間にかしないことが当たり前になってしまっていた、手や腕をとって絡めたり、キスやハグをして相手に触れること。それらを当たり前のように許されること……その歓びと幸せ。
思い出したら止まらずに、光の中で溺れたように……わたしは俊哉さんを求めた。

溺れているのに乾いた心。そこに注がれるのは同情じゃなく、愛情——ずっと側にあったその事実に、今頃になってやっと確信を抱きながら。


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