Pair key 〜繋がった2つの愛〜

全開になるように服を寛げて、愛音の背中から腰に触れてゆく。
何度か撫でているうちに視界が広がるのを感じた——そして気が付けば、私の中の黒い渦は消えていた。
芽生えた衝動も、沈下している。



先ほどの、貫けるかという問いの答え……単に貫く自信が無いというだけのことかもしれん。
貫きたくないと言ったわけでは無いのだからな。

鈍感娘のことだ、どうせ私の真意には微塵も気付いてないのだろう。
質問の意味を取り間違えている可能性も十分にある……だとすれば愛音の答えに深い意味などある筈がないし、それの是非を己に問うのは考えるだけ無駄というもの。

面倒だが、コイツにはそうするしか無いのかもしれん……そう思って、私は率直に問いかけた。痛くはないのかと。
すると愛音は驚いたことに、私が痛がっていると思ったのだと言う。だから自分も同様に、痛みを受け止めているのだと言う。

(コイツには、私の苛立ちや葛藤、疑念や絶望といった苦悶に満ちた衝動が、見えていたのか?)

その理由は分からずとも、感じ取っていたのかもしれない。

だから私の、行き場の無い持て余した感情を受け止めた――

自分で傷つけておきながら……そんな理由で耐え忍ぶ、そんな簡単に身体を許す愛音を心底バカな奴だなと思った。
思ったが、私のためにしたことだと自惚れることも出来る。



(なぜだろうな……)


今ならいつも以上に本音を言えそうな気がした。


(まあ、たまにはそれも良いだろう。お前の驚いた間抜け顔も、なかなか見物だしな……)






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