【完】純白の花に、口づけを。
しばらくそうやって猫とじゃれあってれば、コンコンと部屋の扉がノックされて。
「和架ー…って、あら。泉ちゃん」
顔を覗かせたのは買い物から帰ってきたらしい千花で。
「“泉ちゃん”?」
「和架の上に乗ってるその猫よ。ハルが昔から飼ってる猫で、オスなんだけど泉ちゃんなの」
コイツの名前、泉だったのか。
「もっと、猫らしい名前かと思ってた」
にゃあとまた鳴いた泉は、俺の元からぴょんっと床に飛び降りて。
千花の足元に寄っていった。
「ふふ。泉ちゃんの名付け親は私なの」
慣れた手つきで泉を抱っこした千花。
泉も泉で、千花のことはわかっているのか腕の中でジッとしてる。
「ふぅん。ちなみに、なんで泉?」
「えっ」
普通に名前の由来を聞いただけなのに、なぜか千花は白々しく目を逸らした。