魔女の瞳
古びた陰気な雰囲気の洋館の、重々しい扉に施錠する。

…この一人暮らしには不相応な大きな洋館が、日本での私の棲家だった。

表札には『四門』の文字。

四門メグ。

それがこの時代…21世紀の私の名前だった。

デッドゲイトをそのまま訳すと『死の門』。

でもそのままだと縁起が悪いので『四門』と名乗る事にした。

…察しの通り、私は故あって『限定』の魔術を発動させてしまい、この日本という狭い国に閉じ込められる事になってしまった。

つまり唯一にして絶対の決まり事である『人を傷つけない事』という掟を破ってしまい、ヨーロッパからこんな日本くんだりまで来る羽目になってしまったのだ。

…詳しい事情は追々説明するという事で。

正直に言うと、もう人間社会での生活はうんざりしていた。

だから掟も破ったのだし、本当ならば命を絶ってしまってもよかったのだ。

しかし生憎と私の身には再生の魔術が施されていて、自殺しようにも苦痛を味わうだけで死に至る事はなかった。

この時ほど再生の魔術を呪った事はなかった。

ならばせめて人里離れた山奥ででも隠遁生活を送ろうと考えたのだけど、この日本という国は狭い割に人口だけは異常に多い。

人里離れた場所など存在しないのだ。

どこへ行っても人間はいる。

私がこの国で暮らしていくには、魔女という事を隠し、人間社会に溶け込むしか方法はなかった。

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