魔女の瞳
私は六百年もの間、この日本という国で、人間社会に紛れて暮らしてきた。

…再生の魔術の短所は、死んでいく細胞すら再生させてしまう事だ。

老化すら止めてしまう。

私の体は六百年前からずっと、十七歳のままだ。

だから私は六百年もの間、日本各地を転々としながら高校生の身分を演じてきた。

流石に同じ土地にいては老化しない私は怪しまれてしまう。

その土地の高校を卒業する度に土地を移り、魔術で戸籍などを偽って再び高校生としての人生を送る。

面倒な事この上なかったが、限定の魔術と再生の魔術の効果のお陰で、こうする以外に方法がなかったのだ。

…今度の転校先の学校へと向かう坂道の途中で、失意に満ちた溜息をつく。

私は一体、いつまでこんな人生を送ればいいのだろう。

魔女になってしまった事を、これ程呪う事はなかった。







「四門メグです。皆さんよろしくお願いします」

転校先の学校。

そのとある教室。

私は教壇の前で、極上の笑顔を作る。

ますば好印象を与える事が大切だ。

反感を買えば揉め事が起きる。

揉め事が起きれば魔術を行使する事態に巻き込まれかねない。

新しい土地では当たらず障らずのポジションを築く事。

六百年もこの国で暮らしていると、処世術もだんだんとわかってきていた。



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