魔女の瞳
「さっきの態度、気を悪くするなよな」

珍しく修内太が、説明以外の言葉を口にした。

「安藤先生、二年前に娘さんを交通事故で亡くして以来、精神的に不安定らしいんだ」

「…そうなの」

私は廊下を歩いていく白衣の後ろ姿を見送った。

「…校内の案内はこんなもんか。なんか気になるとこあるか?」

修内太が言う。

「そうねぇ…」

私は窓の外を見た。

本当は日を改めて、一人で調べてみようと思ったんだけど。

「あの木造の建物、何かしら?」

私は窓の外の二階建ての建物を指差した。

「ああ、旧校舎だよ」

修内太が視線を窓の外に向けた。

現在の校舎が建てられるよりも相当昔に使われていた校舎で、今では教材などの物置として使われているのみらしい。

「そう…」

「どうした、何かあるのか?」

修内太の問いかけに。

「ううん、ちょっと興味本位で聞いてみただけ」

私は答えた。


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