魔女の瞳
ソファに座ってリゾットを口に運ぶ私を、修内太は呆然と見つめている。

「そんなに見られると落ち着かないんだけど。食べたら?リゾット。熱い内の方が美味しいわよ。今回のはよくできたんだから」

「え、あ、ああ…」

言われて修内太はスプーンを手に取る。

一口食べて、小さく「美味い」とか呟いたりして。

私は内心ガッツポーズをとったりしていた。

「それでね」

スプーンを止めて、私は話を始める。

私が15世紀から生きている魔女である事、事情があって日本で暮らしている事、旧校舎に異変を感じて探りを入れているうちにあの戦いになった事、運悪くそこに修内太が出くわしてしまった事…。

「……」

修内太は固まってしまっている。

理解の範疇を超えてしまったようだ。

だけど無理矢理にでも理解してもらわなければならない。

彼にとってはここからが本題だ。

「で、その左目の呪眼なんだけど…」

私は彼の顔を見る。

「移植は成功したから、もう数時間もすれば馴染んで普通に見えるようになるわ。特に日常生活に支障はないと思う。ただ」

「ただ?」

不安そうに問い返す修内太。

「あくまで『魔女の為の瞳』だから。加えて貴方も魔力持ちだから、少しは弊害が出るかもしれない」

例えば、呪眼が修内太の魔力を吸い取って、少し疲れやすくなってしまうとか。

本来なら見えないものが見えるようになってしまうとか。

「ぼかして言うなよ、見えないものって何だ」

修内太が脅えたように言う。

「あら」

私は肩にかかった黒髪を片手ではねのけた。

「言っていいの?」

「…いや…聞かないでおく」

私の反応で、どんなものが見えるのかは何となく想像がついたようだ。

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