魔女の瞳
「目が覚めたのね」

エプロン姿のまま、私はお盆にリゾットの入った器を載せて修内太の元に向かう。

「え…四門」

驚いた顔の修内太。

彼ほどの無愛想男でも、目が覚めると女の子の家のベッドに寝かされていたとなれば流石に驚くらしい。

「とりあえず話は食事をとりながらにしましょう。あ、左目の具合はどう?」

「え?」

そう言われて、彼は初めて自分の左目に包帯が巻かれている事に気づいた。

「まだ外しちゃ駄目よ。拒否反応が出なかったのは運がよかったけど、馴染むまではもう何時間かかかるから」

お盆を修内太の前に置く。

「えっと…四門…?」

状況が把握できていない彼に。

「ああ、言い忘れたけど、私魔女なの」

私はサラッと言ってのけた。

だって今更隠したって仕方ないじゃないの。

あんな化け物と戦っている私を目撃されたんだから。

しかも派手に炎や氷を撒き散らして戦う姿だ。

誰がどう見たって普通の人間とは思わないだろう。

あんな現場を目撃されてまで、私も取り繕おうとは思わない。

『忘却』の魔術で修内太のここ数時間の記憶を消してしまうという手もあったけど、彼には私の呪眼を移植してしまっている。

彼に色々と説明しておかなければならない事もあるのだ。

この際本当の事を話してしまう方が手っ取り早かった。

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