花の名は、ダリア
そんな…
そんな…
いったいどこに…
まさか…
まさか…
クララが血走った目をリビングの入り口に向けると、閉じていたはずのドアが開いていた。
その先にあるのは、さっきアランを迎え入れたエントランス。
そして、上の階へと続く、傾斜がかなりある階段が…
その通り。
ソージが…『貴族』が銃なんかで死ぬはずがない。
そもそも、身体能力の高さ故に素人が撃った銃弾を浴びるはずがない。
吹き抜ける風のようにリビングを後にしたソージは、階段を駆け上っていた。
二階…
じゃねェな、こりゃ。
血の匂いは、さらに上から。
なーんかヤな予感がすンだよね。
クララが叫んだ瞬間、スゲぇ濃厚な香りがしたンだよね。
これはたぶん、流れたばかりの血の香り。
その上、下からはクララが追ってくる気配。
コレもう、ヤな予感しかしないよね───!?
盛大に溜め息を吐き出しながら、さらに傾斜がキツくなった階段を上る。
三階にあるのは、おそらく居住に適したスペースではない。
大抵の住人が物置として使用するような、屋根裏部屋だろう。
その屋根裏部屋の簡素な扉に、ソージが手を伸ばす…