花の名は、ダリア

少しだけ先の時刻。

ある狭い独房で、以前の二人が言葉を交わしていた。


「喜びたまえ。
例の双子の片割れが、見つかったそうだ。」


「…そう。」


「我々ナチスを装った妙な女といたところを、捕獲したらしい。
全く、最後まで面倒をかけてくれる。」


「…妙な女?」


「あぁ、心配には及ばない。
どうせレジスタンスの生き残りだろう。
一緒に連行すると伝令が来たから、早々にその不届き者を片付けて実験開始だ。」


「‥‥‥‥‥そう。」


「後で呼びに来るから、待っているがいい。
ハハハハハ!
おまえももうすぐ用無しだ!」


もう耳に馴染んだ高笑いを残して、一人の男は去った。

もう一人の男は…


「そうだね。
君はもう用無しだ。」


閉じられた鉄の扉を見つめ、微かに口角を上げた。


「実験開始じゃなく、終了だよ。
でもって、この茶番劇も終了だ。
誰かの知恵を借りてみるのも、一つの手かと思ったケド…
たいしたコトなかったな。
『ナチスの科学力は世界一ィィィ!』なんて言うクセに。」

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