花の名は、ダリア

丸裸で壁を向かされた多くの囚人たちが、背後から銃殺されたと言われる中庭。

その、死の壁の直前まで真っ直ぐに歩き、建物の角を曲がれば第10ブロック。

トーデスエンゲルの聖域だ。

もうすぐデボラに会える。

けれど同時に、あのイカレた医者にも…

縋るような思いで自らの腰に手を伸ばすが、さっきまでソコにあった固い感触は、今はもうナイ。

ソージから渡されていたサーベルは、当然の如く没収されていた。

つまり丸腰なンだよネ!?

隣を歩く観光気分のダレかさんも、そもそも丸腰なンだよネ!?

もうコレ、バッドエンドまっしぐらデスヨネ─────!!??

絶望に苛まれたヨシュアが、青い顔でチラリとダリアを見上げるが…

視線に気づいたダリアが返してきたのは、あどけない微笑み。

しかも愛らしいエクボ付き。

あぁ…

なんて可愛いの。
でもって、なんて無駄に癒し系なの。

ほんと、気が抜ける。


(…
なるようになれ、だ。)


ふ、と苦笑を漏らしたヨシュアが再び前を向いた時にはもう、彼は覚悟を決めた男の顔になっていた。

そして扉が開かれる。

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