花の名は、ダリア

開け放した扉の前で。

今では慕わしいなんて思ってしまう、意地の悪い笑みを浮かべて。

ソージは棍棒を持った片手を軽く上げる。


「俺、行くわ。
おまえもとっとと逃げろ。
ダリアが水浴びしてた湖をグルっと半周したトコロにある農家がな、おまえらみたいなのを匿ってくれるってよ。」


「お… おぅ…」


「向かってくるヤツらだけ、相手にしろよ?
一撃離脱だ、忘れンな。」


「おぅ。」


「じゃ、これでお別れだ。
もう便所飯して泣いてンじゃねーぞ、クソガキ。」


「おぅ!

って、泣いてねーわ!
便所飯もしてねーわ、クソヤロー!」


ヒャハハ、と廊下に嘲笑を響かせて、ヨシュアの前からソージが消える。

ダリアさんはあんなに可愛くて優しいのに、アイツはなんてヤなヤツだ。

最後まで、本当にヤなヤツだ。

目を閉じたヨシュアは、残された刀を抱きしめて…


(ありがとう、ダリアさん。
ありがとう‥‥‥ ソージ、さん…)


口の中でそっと呟いた。

夜だけが聞いた、少年の心の声だった。

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