花の名は、ダリア

『私がいるンだから、アナタは一人キリじゃないわ』


月に照らされた縁側で、ダリアがくれた言葉を思い出す。

優しすぎるよ。

誰よりも深い孤独を抱えていたのは、貴方だったのに。


「俺がいるんですから、貴方はもう一人キリじゃありませんよ。」


そのセリフは、優しさと労りに満ちた彼女のソレとは異なり、醜いエゴの塊にすぎない。

でもね?
誓って嘘はない。

目の縁を指でなぞると、反射的に伏せられる長い睫毛。

現れたダリアの瞼に唇を押し当てて、ソージは薄く微笑んだ。


「みんなと同じじゃなくても、俺が貴方の傍にいますから。」


「…本当?
ソージは離れていったりしない?」


「絶対に離れません。
てか、絶対に放しません。」


凍った結晶が溶けて流れ落ちたのを感じると、唇を鼻先、そして頬へと滑らせて。


「…本当?
世界征服だなんてバカ言って、ヒドいコトしない?」


「中二病患者と一緒にしないでください。
怒りますよ?」


擽るように耳を甘噛みすると、やっとダリアはうふふ、と笑みを漏らした。

< 300 / 501 >

この作品をシェア

pagetop