花の名は、ダリア
いつまでも胸に刺さる話のキッカケは、ほんの些細なコトだった。
二人で日の暮れた街を歩いている時、ダリアがショーウィンドウに飾られたフランス人形に目を留めたのが、コトの始まり。
「ヒラヒラー、フリフリー!
カーワイー!」
「そうでしょうか?
この年頃の貴方のほうが、きっと、もっと、ずっっっと、可愛かったと思いますよ。」
「…出たわね、幼女好き。」
「否定はしません。
幼女な貴方が着るヒラヒラフリフリを、ジワジワと引き裂いてみたかった…」
「ちっちゃい頃、こんな格好したコトないケドね、私。」
「そうなンですか?
どんな格好していたンです?」
「なんか…
身体に布をグルグル巻いて、留める…的な?」
…
どうやら、時代背景から認識を改める必要があるようだ。
キトンとか、トーガとか…そんなカンジか?
つまり紀元前ってワケか?
この人の幼少期は、謎すぎる。
と、言うより…
「貴方、子供の頃のコトを覚えてるンですか?」
俺は目を瞬かせてダリアを見つめた。