花の名は、ダリア

「来るな。」


静かだが、鋭いソージの声が、ダリアの手を止めさせた。


「どうして?
こんなの、すぐに壊せるわ。」


「だからですよ。
必ず次にナニかある。
二人まとめて罠にかかる必要はありません。」


「でも…」


「俺なら大丈夫です。
貴方はすぐに外へ」


ガタン!

『出てください』
そう言い終わる前に、ソージの足元にあった床が抜けた。


「ソージ!?」


鉄格子の隙間からダリアが手を伸ばすが…

届くはずもない。

泣き出しそうに顔を歪めたダリアの目の前で、ソージが落ちていく。


「先に帰ってろ!
絶対に戻るから!」


という、叫びを残して。

どうしよう…

『来るな』と言われマシタ。
『罠にかかるな』と言われマシタ。

『帰ってろ』とも…

どうしよう、どうしよう‥‥‥

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