花の名は、ダリア

「道に?
他に血痕はなかったのか?」


バーサンの手から草履を取って、注意深く眺め回しながらソージは言った。

裏側まで血に汚れている。

事故にせよ事件にせよ、それなりの流血を伴う怪我をしているのではないだろうか。


「わかりません…
息子も嫁も、必死で捜してて…
あの子を… 捜してて…
私… 私も…
私も早く行ってやらなきゃ!」


皺だらけの顔をさらに皺くちゃにして首を振っていたバーサンは、悲痛な叫びを上げると再び駆け出した。

ソージは縁側から立ち上がり、バーサンを止めようと…


「バーサン、待っゲハっっ」


声を出した途端、別のモノも口から飛び出した。

激しい咳と大量の血。

膝から地面に崩れ落ちたソージは、右手で胸を強く押さえた。

止まらない。
そして、バーサンも止められない。

闇雲に走り回っても、きっと彼女の孫は見つからない。

草履が落ちていたという場所に戻り、血痕を捜さなければ。

血痕があれば、ソレを辿る。
孫の居場所、もしくは帰らない理由がわかるだろう。

血痕がなければ、捜す対象を変える。
捜索範囲を広げ、子供を乗せられる大きさの荷車などを捜すべきだろう。

やらなきゃいけないコトは、わかっているのに…

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