花の名は、ダリア

実は随分前から、ちょっとおかしいって噂はあったンです、なんて、タナカはカオリの顔色を窺いながらも話し始めた。

始まりは、セミナーに大金を出資していたドコぞの社長が、修験者になった時。

社長は教えに疑問を持ち…

『こんなセミナー抜けてやる』
『伯爵なんて気取りやがって、ペテン師が』
『金を返すよう、話をつけてやる』

などと喚き、ある日本当に直談判に向かった。

その翌日、伯爵は言った。

『一晩中話して、彼はさらなる高みに上った』

つまり、修験者になった、と。

その時カオリは、自分をペテン師呼ばわりした男を許し、改心させた伯爵の懐の深さに心酔した。

けれどカオリの知らないトコロでは、あんなに息巻いてた社長が考えを変えるなんて、それどころか修験者になるなんてちょっとおかしいね、と噂されていた。

次は、修行場入りした恋人がいつまで経っても戻ってこないコトを心配して、コッソリ様子を見に行った男が、修験者になった時。

一度は地下から戻った男は…

『なんて恐ろしい…』
『恋人はきっともういない…』
『伯爵に確かめなくちゃ…』

などと青ざめた顔で呟き、震えながらもすぐに直談判に向かった。

その翌日、伯爵は言った。

『一晩中話して、彼も恋人と共に己と闘う決断をした』

つまり、修験者になった、と。

< 426 / 501 >

この作品をシェア

pagetop