花の名は、ダリア
ぎゃっ、という悲鳴が上がり、ようやくソージの足が解放される。
そりゃ、大量のヌルヌルベチャベチャが顔面に降ってきた日にゃ、ね。
張りつくワカメを両手で払いのけたサムは、床に座り込んだまま裸のソージを見上げた。
スピードに特化した、しなやかで質のいい筋肉に覆われた肉体に、火傷の痕跡はない。
対『貴族』用閃光弾に焼かれたハズなのに。
不発だったの?
いや、確かに紫外線は降り注いだ。
なら…
「君、どうやって…」
やっと正常な判断力を取り戻したサムが、呟くようにソージに訊ねた。
濡れた髪を掻き上げたソージの唇が、ニヤリと歪む。
「手首を斬ったンだ。」
「ナニソレ?リスカ?
なんの話?」
「だから、なんで生きてンだって話だろ?
あの光見て、さすがにヤベぇと思って、手首斬り落として思いっきり投げた。」
「え!?あの一瞬で!?
ジャパニーズ剣客、スゴいな!?」
「スゴいのは俺だ。
俺を褒めろ。
でも、思いの外飛んじまったみたいで、気づいたら海ン中だったってワケ。」