花の名は、ダリア

話は変わり、数時間後。

監禁だとか、行方不明だとか、はたまた殺人だとか。

ちょっと要領を得ない通報が入り、連絡を受けた島に駐在している警察官が、自己啓発セミナー『使徒の国』の合宿所に踏み込んだ。

そこで発見されたのは、無機質な地下を彩る夥しい血痕と遺体の一部。

すぐさま大々的な捜査本部が立ち上がり、謎の猟奇殺人事件として世間を騒がせることになるのだが…

迷宮入りは確実だろう。

被害者たちは、『伯爵が人間をバケモノにしている』などと、夢のようなコトを言うばかり。

そのバケモノは、一体として発見されず。

セミナーの中心人物に酷い虐待を受けた結果の集団ヒステリーだと推測されるが、当の中心人物『伯爵』は依然として行方知れず。

それどころか、調べれば調べるほど、実在していたのかどうかすら怪しくなってきた。

もう、ね。
完全にお手上げ。

実は、ただ一人、真相の一端を握る女性がいるのだが…

彼女は絶対に口を割らない。
知っている素振りも見せない。

だってそれは、人智の及ばざる領域。
一人のヴァンパイアが紡いだ夢の跡。

人の法では裁けない。

それに彼女だって、全てを知っているわけではない。

被害者の逃亡に手を貸してくれた、残る二人のヴァンパイアたちがどうなったのか…

それもまた、人智の及ばざる領域。

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