君の一番になりたくて

「ちょ、待て、玲。
保健室登校で友達の影すら無いお前に、
どうやったら友達ができたんだ。」
「いや、ハル先輩。
それ結構グッサリくるんで、
オブラートに包んでください。」
「あ、ごめん。」


思ったことがそのまま口に出た。
玲は明らかに不機嫌になる。
俺はそんな機嫌を戻そうと、
「で、どんな子?可愛い?」と、
冗談めいてみたが、
「変態。」と、罵倒を吐かれた。


次こそは、と質問を続ける。
「どうやって知り合ったの?」
その質問に、玲は何を思い出したのか、
少し微笑んで答えてくれた。
「ユキ先輩が、紹介してくれたんです。」
「え、ユキが?」
意外だった。
俺の知らない間に二人に面識があったのが。
「ユキといつの間に会ったの。」
「えっと・・・一回目はハル先輩が、この前提出物を持って職員室に行ったときに突然保健室に来たんですよ。すれ違いで帰っちゃいましたけど・・・。その時に少しお話して、その時にメアドも交換してて、・・・。」
「え・・・。」
その話を聞いているとき俺の思考回路はフリーズしていた。メアド聞いたのか、ユキのやつ。・・・てことは、俺より先に玲の携帯にはユキの連絡先が入ってて、当たり前だけどユキの携帯には俺より先に玲の連絡先をゲットされてて。
俺の方が早く会って、
俺の方が仲がいいのに。
聞かない俺が悪いのか。


「ハル先輩?聞いてます?」
「あ、ごめん、で、なんだっけ?」
「もう・・・。で、ちょっとしたらユキ先輩から連絡が来て、千恵ちゃん・・・えっと、ユキ先輩の同じ弓道部後輩の一年生の女の子なんですけど、私と同じクラスで、私の事心配してくれてたみたいで。保健室登校だって教えた翌日の休み時間に会いに来てくれて。あ、その時ハル先輩は珍しく授業に出てました。」
「珍しくっていうな、俺がダメな人間みたいに聞こえる。」
「事実です。」
「玲には言われたくないね。」
「それもそうですね。」
顔を見合わせて笑う俺と玲。
彼女の顔は嬉しそうで、
それにつられて俺も少し嬉しくなった。

色々ムカつくけど、
ユキには感謝しないとだよな。
・・・カフェオレでも奢ってやるか。



「ハル先輩?また上の空ですよ。」
「そんなことないって。
・・・よかったな。」

そう言って頭を撫でてやると、
玲はまた嬉しそうに「はい!」と笑った。
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