星降る夜に。
「最初は一人で旅行しても…って思ったけど、莉子と出会えたから、ここに来て良かったな」


大輔さんは私の前髪をかき分けると、少し屈んで私の額にキスをした。

ほんの一瞬、柔らかい唇が額に触れただけなのに、キスをされたところが熱を持ったような感覚になる。


もっと、この唇が欲しい―――。



「俺、普段はこんなことするタイプじゃないんだ。言い訳にしかならないけど…。でも、莉子にキスしたくなって」


慌てている大輔さんが可愛かった。


「私、こんなことされたら突き飛ばすと思う。でも全然嫌じゃなかった」


「そんなこと言うと、もっとキスするぞ?」



大輔さんは笑いながらそう言うと、私の手を取って歩き出す。

もっとキスされたい。

言ったらいいのに言えない。もし冗談だったら惨めになるから。
でも、今正直にならなかったら、いつなるの?

自分がせめぎ合う。


「…いいよ、しても」


呟くように、消え入りそうな声で言ったのに、大輔さんは立ち止まって振り向いた。
< 16 / 171 >

この作品をシェア

pagetop