ためらうよりも、早く。


たどたどしい反応を楽しむと、微かに震える私の唇に遠慮なくキスをしてきた。


口を開けと小さく舌先で、トントンとノックをされても大人しく従ってしまう。


容赦なく侵入してきた舌は熱を孕み、顎先を掴んでいた手で今度は耳たぶを撫でている男。


ぞくりと俄かに震える身で立ち上がると、咥内の絡みをもっと濃厚にしたくて、ヤツの上に跨がってしまう。



ひとつの椅子にふたりで乗って。握ったままの手は、離れないようにキュッと力を強めて縋りつく。


それでも、絶対に何も言わない。感情がついて出そうなら、この男に唇を押し付けてしまえば良い。



不安定だからスリルがある。背徳感に抗おうとすればするほど、虚しい欲を求めてしまう。——やっぱり、さよならなんて出来ないと。



でも、罪を負うのは私だけでいいの。だから今だけ、心の内では素直でいさせて……。


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