ためらうよりも、早く。


「では、こちらで宜しいのですね?ありがとうございます」

ビジネスを円滑に進めようとしても、自分の思うようにいかないことの方がはるかに多い。


ネチネチと小うるさい相手とやり取りする場合、ワントーン高くしたビジネス用の声はマスト。


入りは和やかな雰囲気で進めていくが、大事なのは絶対に自分の意見を譲らないこと。


恋愛で定説とされている、“押してダメなら引いてみろ”などとんでもない話だ。


半歩でも引いた時点で、交渉は相手側が優位に立ってしまう。でも、相手の立場を尊重するのも大切。このさじ加減が非常に難しい。



「ええ、そうですね。しかしながら、僭越ではありますが、私どもは納期よりも品質第一ですので、それでは困ります。はい、御社のご意向はもちろん社長にきちんと伝えておりますのでご安心下さい。
私どもは御社の縫製技術に助けられて今があります。ですから、サンプル品が届いて大変危惧しているのです。
あれほどのミス、初めてでしたから。ええ、もちろん報告書類はすべて拝見しておりますよ?それを踏まえてお進め頂けませんか?
今後は9月操業開始されるラオス工場でもご製作頂けますよう、重ね重ねお願いいたします」

ちなみに今は、古くから付き合いのある下請けさんに遠回しに釘さし中だ。


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