ためらうよりも、早く。


本来、こういった処理や忠告は、担当部署の者が行うこと。


それをなぜ私が連絡しているかというと、……朝比奈家——主に父と親交のある人だから。そう、下に任せられない案件なのだ。


今まで散々と迷惑を被ってきたが、父とも今回限りで恩情をかけるのは止めると決めていた。


事情を汲んで何度も穏便に済ませてきた分、先方はそれが当たり前のような振る舞いを見せた。


その時点で、辣腕社長の優しさは消える。——このままでは淘汰されても仕方ないだろう、と。


私からみれば、父はよくここまで我慢強く耐えたと思う。……娘は一度で見限るくらい非情な女ですから。


「そうですよね。御社のお気持ちはよく分かっておりますよ」

ああ鬱陶しいわ。当社はおろか納入先にまで損害を与えておきながら、このお気楽な態度は何なのか。



見苦しい言い訳を電話口で聞かされると、舌打ちしたくなる。——保身に回るより、することは山ほどあるっての。


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