ためらうよりも、早く。


私が汚れた箇所を拭きながら微笑むと、4歳下の妹——朝比奈 望未(アサヒナノゾミ)、通称・のんは不満顔でパンを頬張っていた。


「見解の相違があるけれど、セックスしたくなるのは生理現象だもの。
はしたないなんて全く思わないわよ?――ほら現に、のんおめでたじゃない。お姉さまはとっても喜んでるわ」

「ちょ!?えええええ!」

私の無茶苦茶な御託に聞き入っていたが最後、のんにとってはとんでもない暴露が待っていた。


何を言い出す!と言いたげに、バンと両手を勢いよくテーブルに置いて立ち上がった彼女。


——笑顔に騙されるのは何千、いや何万回目……?それがこの子が周囲に愛される理由でもある。


さらに真っ青な顔で呆然としている人は多分、私の発言に最も衝撃を受けたに違いない。


「の、望未……、ま、さか尭の子が!?」

「パ、パパ……、はい」

斜め向かいで互いを窺うように見つめる彼らは、頭の中が真っ白になっていることだろう。


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