ためらうよりも、早く。
「か、か、かあさーーん!!た、たた、大変だあああ!」
情けない声を上げて席を立ったのは父の方。そして向かった先は、お母さんのいるキッチンだ。
会社のトップとして社内では決して見せない弱さも、母の前だと本性が隠せない様子。今ごろ、抱きついて今後を相談しているに違いない。
「ぎゃあああ!柚ちゃんどうしてくれるのよー!」
隣から掴みかからんばかりの勢いでパニック状態の妹が叫ぶため、頭を撫でて席に着かせた。
「これで面倒ごとも省けたの。ふたつもよ?――あとは尭が上手くやるから簡単に話も進むわ。のんは何の心配いらないの」
「……大丈夫かな?」
「でも、早く尭に連絡した方が良いわね」
「もうっ、そんな簡単にぃ!あ、でも、尭くんに電話しなきゃ!」
20代にして、頬を膨らませたりするのはアリ?とは思うけど、まあ妹だから許しておこうか。
おろおろしながらスマホを手にしたのんは、半泣き状態で彼氏の尭にどうにか電話をかけた。
白い肌から血の気は失せているうえ、考えもまとまらない彼女の様子を見る限り、のんは父の性格に似ているなと思う。