Revive



転校してくる前、僕はずっと1人だった。
なぜ1人になったのか・・・。それは・・・。
僕は前の学校での出来事を思い出す。
思い出すといつも最初に浮かんでくるのは
僕がいじめられている生徒を助けている場面だった。

僕は今、雨の中を1人で帰っている途中だ。
傘を持つ手が冷たくなっていた。
ふと前を見ると、遠くの方で傘をさして立っている人が2人いた。
よく見るとその1人は夢野だった。

「夢野・・・?」

僕は立ち止まり、その2人の様子を遠くから見ていた。

しばらくすると、2人は別れ夢野はそのまま歩いていってしまう。
夢野といたもう1人の人は僕がいる方に歩いてくる。
僕はそれが誰なのか気になった。
その人との距離が近くなると、僕はその人が女性だと分かる。
僕の方に歩いてくるその女性を、僕は思わず呼び止めた。

「あっ!あの!」

僕の声で女性は立ち止まった。
僕の制服を見ると女性はニッコリと笑う。
僕の母親と同じくらいの年齢の女性だと思った。

「さっき、夢野君と話してましたよね?
僕、夢野君と同じクラスの空野翼って言います!」

女性は僕を見て「あ!」と声を出した。

「あなたが転校生の空野翼君?」

女性はそう言うと、嬉しそうに僕を見た。

「夢野君から話は聞いてるわよ」

夢野が僕の話をした?この人は一体・・・。

「あの・・・あなたは・・・」

僕がそう言うと、女性は僕の目を真っ直ぐ見る。


「青木直弥の母です。と言っても、あなたは分からないと思うけど・・・」

青木直弥?僕は口を開けた。

この人が・・・青木直弥の母親・・・?


「直弥君のことは聞いてます」

僕は青木の母を見る。

「聞いた時は・・・驚きました・・・。
一体どうして・・・。」


僕は何と言ったら良いのか分からなかった。

「話は聞いているのね。
直弥は、ずっと悩んでいたの・・・。
私がもっと、あの子の話を聞いてあげれば良かったの」


青木直弥は悩んでいた。
たしかに、そうでなければ屋上で飛び降りたりはしない。

「私の夫は直弥に厳しかったから・・・。
それに、学校の人間関係でも悩んでいたみたいなの。
1回だけ私にそんな話をしてきたことがあった。
でもあとは何も話してくれなかった」

青木の母は顔をあげて空を見た。

「夢野君はよく直弥に会いに来てくれるの。
最近来る回数が多くなった気がする。
お墓の前で、直弥と何か話しているような、
そんな気がする時もあって・・・
どうして直弥は、
こんなに優しい人がクラスにいるのに
あんなことをしたのかって思う時もあった・・・。」

僕は青木の母の言葉を聞き、切ない気持ちになった。

青木の母はきっと、夢野が学校でみんなから恐れられていることを知らない。
青木直弥の死が夢野のせいにされていることも知らないのだ。









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