Revive


「お兄さん!起きてよ!」

と、少年の高い声で僕は目を覚ました。僕は眠っていたようだが
そんな感じは全くしなかった。

「お兄さん、いつからここにいたの?」

少年の夢野が僕に言う。僕はずっとここにいた。
まだ朝だと思っていたが、時計を見ると午後の4時を過ぎていた。
夢なのか過去なのか、よく分からないこの場所に来た時間と全く同じだ。

「お兄さんって、どこからきたの?」

何も言わない僕に夢野は新しい質問をしてきた。

「未来から・・・なんて言っても信じないよな」

僕はそう言って小さく笑った。未来から来たなんて言葉を信じる人などいない。
僕は夢を見ているんだ。

「なぁ、夢野君。お母さんは元気かい?」

僕がそう聞くと夢野は頷いた。

「うん。元気だよ。」

夢野が笑顔でそう言うので僕は急に切なくなった。
たとえこれが夢の中だとしても、
夢野にはこんな少年時代がしっかりとあった。
母親や友達がいる今の少年が、
この先どうなっていくのかを知っている僕は、
彼のこれからの未来を変えてあげたいと思ってしまう。
未来を知っていることがこんなにも辛いとは思わなかった。
人間は、未来が見えないからこそ希望を持てるものなのだろう。

「君のお父さんは・・・」

僕はそう言いかけて俯いた。

「父さんは、たまにしか帰ってこない。
でも別に良い。母さんさえいれば」

夢野の目付きが変わった。父親の話をする時の夢野は
いつも、一点を見つめて鋭い目付きになる。
それは子供の時から変わっていないのだろう。

僕はそれから、次の日も、その次の日も、
今座っているベンチから動かなかった。
ここにいることで、夢野はいつも僕に会いに来た。
僕がここから動いてしまったら、もうこの場所には戻れなくなって
夢野に会えなくなってしまうような気がしたのだ。。
夜になると僕はこのベンチに横になって眠りにつく。
そして目が覚めた時には午後の4時を過ぎていて
夢野がやってくる・・・という事をずっと繰り返していた。




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