【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―



コンコン

コンコン


真っ暗闇の中でその音が鳴り響いていた。
もう少し、眠っていたいと思ったけれど、

その音のせいで、眠れやしなかった。


仕方なく眠りから覚めると、

大雨の音の方が大きくて、その音は、ほとんど消えていた。
だけど、聞こえる。



その音のする方向に目を向けた。

リビングの大きな窓だった。
そこは、庭から出入り出来るようになっている窓で、

その窓をずぶ濡れになって叩いてる女の子を見て目を見開いた。


そして、すぐにまだ夢から覚めていないのだと悟った。


だって、その子はここにいるはずのない人だったから。


いい夢だ。

夢で会えるなんて、
本当に夢みたいだ。


ずぶ濡れになって、かわいそうだ。


ああ、夢なら、触れてもいいのだろうか。


夢くらいなら許されるだろうか。


俺は窓の鍵を開けて、窓を開いた。
彼女は俺を見上げて少し目を潤ませていた。


ああ、可愛い…


夢なら、

いいよね。


今だけだから。



俺はその子を家に上がらせるや否やずぶ濡れの体を思いきり抱き締めた。
懐かしい感触、小さな体、

彼女だ。



彼女をソファに押し倒し、もっと深く抱き締めた。
額と頬に軽くキスをした。首筋に口をあてがうと身をよじるように抜け出そうとするので、しっかりと捕まえて、唇にキスをした。


何度もキスをした。


いったい自分は何をやってるんだろうと思ったけど


夢なら、許されると思った。


身動きできない彼女をそのまま抱き締めて、いつの間にかまた意識を閉ざしていた。


もう少し、夢を見ていたかったのに、残念だ。


けれど、リアルだったな。

唇の感触まで、そっくりだなんて。


いい夢だ。





もうこのまま一生眠り続けてもいいと思った。

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