眼鏡男子の脳内デフラグ


「数値は悪くないね」

「……はい」


「でも、無理はしないように」

「はい」



明日は月曜日

退院だ


やっとだ

“文化祭はいかがでしたか?”

送信ボタンを押す



夜空には月がみえる

でも、雲がかかっていてハッキリとみえない


“心にも眼鏡をかけた方がいいよ!”


僕はあなたを見ているつもりですが

あなたは見られてるとは思ってないということですか?



どうしたら、もっとあなたが見えますか?


風が吹けば雲は何処かへ行きますか?


誰が僕の中に風をおこしてくれますか?



スマートフォンの画面を確認するけれど
……返事がない



忙しかったのかもしれない

もう、寝ているのかもしれない




もしも、あなたと同期できたら

こんな考えは何処かへ消えますか?



“縛り恋愛”

縛っているのはあなたですか?

それとも、この体を蝕む病ですか?



「秋山さん」

振り替えれば、白い服を着た女性


「もう、消灯ですよ」

「……はい」



スマートフォンの電源を切った


電源を切るときは、いつも躊躇ってしまいます

あなたとも切れる気がして




こんなことを

いつまでも続けていたら

電子回路がショートしてしまいそうだ



本当は知っているんです

どうしたら、

CPUの熱暴走を食い止められるのか

脳内電源が落ちるにすむのか



知っているけれど


僕の体はそれを許してくれるでしょうか



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