1年恋愛

三島 詠美

それを言ったのは  三島 詠美 みしま えいみ だった。

「白雪姫ちゃんは~優太が好きなんだってぇ~!!」

なんで・・・

「まあ~白雪姫とか言われて調子乗ってるけど~実際そんな可愛くなくな~い?優太のこと好きとかまじ身の程知らずぅ。あはは」

なんで・・・・・

「ちょっと詠美!!!やめなさいよ!!」

なんで・・・・・・・

「はぁ?帰国子女は黙ってろっつーの。元々部外者じゃん。」
「・・・・・・・・っ!!!」

マリアは最近やっとクラスにも馴染めてきて、それを自分でも喜んでいた。
だからその一言がショックで泣き出してしまった。


ガンッ!!!!!!!!!!!


今まで面白がって笑いながら見ていたクラスメイトも静まり返った。
理由は詠美の机が蹴り飛ばされたから。

「お前・・・マリアに何言ったの?」

そこにいたのは山中 陽だった。
クラスメイトで、マリアと陽が付き合っているのを知っている誰かが、マリアが泣いているのを見て呼んできたのだろう。

「陽・・・」

泣き笑いの顔で陽を見るマリア。
それに陽も困ったような笑顔で応える。

「マリア・・・今日一緒に学校サボろうぜ。気分転換!」
「へへっ・・・うん。あっ・・・でも蜜柑・・・。」

ズキッ

本当は行ってほしくない・・・けど・・・昨日付き合ったばかりだし・・・幸せだもん。きっと・・・ううん、絶対2人でいたいはず。


「私は大丈夫。ありがとう。行って来て?」
「でもっっ!!」
「いいから行って!!!!」
「・・・っ!うん・・・ありがとう、蜜柑。」

2人は出て行った。

「あ~あ、とんだ邪魔者が入ったな~。でも白雪姫ちゃんは逃がさないから。」

「詠美。あんた・・・こんな事して楽しい?」

「楽しいよ~?可愛いって言われて調子乗ってるブスを蹴落とすのってぇ、最高に楽しい。挙句私の好きな人のことを好きだとか言い出すんだよぉ?許せなぁい。」

視界の隅にうつる校庭を2人で歩くマリアと陽。
本当は私も優太とあんな関係になりたいなって思ってる。
まだ出会って間もないけど、この気持ちは本物。


「私は・・・好きじゃない。優太の事。好きじゃないんだよ。」

自分に言い聞かせるように言う。
ズキン

「はぁ?好きじゃないとか嘘でしょぉ?そんな嘘通じると・・「嘘じゃないよ。」」

「嘘じゃない。好きじゃない。優しいしかっこいいけど・・・好きじゃないんだよ。」

ズキンズキン・・・

「好きじゃ・・・・・ない・・・・。」

あぁ、自分に嘘をつくのってこんなに大変なんだな・・・。
胸が張り裂けるように痛いよ・・・。
痛くて痛くて・・・涙が出る・・・。
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