恋のカルテ
気付いた時にはもう朝だった。引かれたカーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。
起きようと思ったが、先生の腕の中にいる私はそこから抜け出すことが出来ない。
仕方なくゆっくりと上下する胸にもう一度頬を寄せた。
「……温かい」
心地よい体温。とくとくと聞こえる鼓動が、まるで子守歌のように私をまどろみに誘う。
次に目覚めた時には、ベッドの中に先生はいなかった。
気怠い体を起こして、床に散らばった下着を拾う。
替えの下着はない。着替えもだ。仕方なくそれを身につけると服を着てリビングを覗いた。
「起きたか」
「あ、はい」
先生は着替えを済ませて、コーヒーを飲んでいた。
「どこかに出かけるんですか?」
「うん。本当は加恋と過ごしたかったけど、今日は仕事だ。しかも当直」
「当直ですか?」
「そう。だからもう行かないと。……何かあったら連絡しろよ」
「はい」
私は先生を見送ると、シャワーを浴びて買い物に出かけた。
しばらくは、荷物を取りに戻ることも出来そうもない。
着るものと、メイク道具くらいは揃えておかなければならない。