恋のカルテ

-3


 やがて内科の研修が終わり、外科での研修が始まった。

新しい指導医は、寡黙で近寄りがたい人。

五十嵐先生とは全く違うタイプで最初は戸惑ってばかりだった。

胃が痛くなる日々。でも、負けてはいられない。

私が目指すのは、外科医だ。

この三カ月で、学べる事は全て学びたい。

そんな私の思いをきちんと汲んでくれた指導医は、他の研修医の誰よりも早くオペの助手に付けてくれた。

「そろそろ執刀してみるか?」

「はい! よろしくお願いします」

初めてのオペは虫垂炎だった。

前夜、なかなか眠れない私を見て、佐伯先生は笑っていたけれど、「仕方ないな」なんていいながら、イメージトレーニングに付き合ってくれた。

結果、オペは無事成功。

担当した患者が元気に退院する姿を見て、思わず泣いてしまった。

この感動を分かち合いたいのに、森くんと来たら仕事そっちのけで、恋に燃えている。

看護師の及川小春という人が好きなのだそうだ。

そして、その恋敵は先輩医師の高木先生だという。

「外科期待のホープと張り合うなんて、森くんもがんばるねえ」

「だって、本気だもん。及川さんのこと、振り向かせて見せるからみててよね」

「はいはい」

私の返事が気に入らなかったのか、森くんは拗ねたように口をとがらせる。

「何そのはいはいって。自分には佐伯先生がいるからって余裕ぶってさ」

「そんなことないよ、私だって幸せいっぱいってわけじゃないもん」

「そうなの?」

「そうだよ」

思い返してみても、好きだとか、愛してるだとか、そういう言葉をもらったことがない。

先生は本気の恋愛をしない人なんだから、当然か。

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