恋のカルテ
「うるさい、放せ」
おそらく軽く振り払うつもりだったんだろう。でも、圭人の肘が私の顔に当った。
ガツンという音と衝撃の後、私は冷たいフローリングの床に勢いよく倒れ込む。
その瞬間は何が起こったのか分からなかった。
体のあちこちに痛みを感じたけれど、どこがどう痛いのかがはっきりとしない。
閉じていた目をうっすらと開けてみると、ちかちかと白い光が散っている。
おそらく頭も打ったのだろう。
でもこれは、ただの事故。
このままでいたら、圭人に心配をかけてしまう。
そう考えた私は手をついてゆっくりと起き上がり、安心させるように笑った。
「……圭人」
抱き起してくれるのかと期待した。でも圭人は手を伸ばしてはくれない。
それどころか険しい表情のまま、こう吐き捨てる様に言った。
「……出ていってくれ」