恋のカルテ

均整の取れた顔立ちに似合う短めの黒い髪。

中でも印象的なのは、吸い込まれそうな程綺麗な切れ長の目。

思わず見とれてしまいそうになる。

「何ぼんやりしてるんだよ、心停止してるんだぞ。早くやれ」

「……あ。は、はい」

私は慌てて男性の胸骨に両手をあてて心臓マッサージを始める。

するとその男の人はスマホを取り出してどこかへ電話をかけ始めた。

おそらく救急車を呼んでいるのだと思ったが、目の前の男性が気になってそれどころではない。

それよりももう、腕が限界だ。

ひとりで心臓マッサージを続けられる時間なんて限られている。

代わってくれないだろうかと思ってチラリとその横顔をみる。

すると思いもよらない言葉が返って来た。

「もうすぐ次の駅につく、そうしたら救急車にのせてこい」

「こいって、どこへ」

「大丈夫、指示はしておいた。オレはそこで待つ」


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