A voiceprint
3章 そして事件が起こった

6 natuのシークレットライブ

 「悲しみの歌」発売後、一時期賛否両論問われたがそれ以上に売れ行きが良かったため平穏の日々が続いた。

 発売と同時にnatuのシークレットライブが予告されており、200組600人限定で行われることになっていた。競争率は数倍で運よく選ばれた人はさておき、落ちたほとんどの人間はあきらめざるを得なかったが、金に物を言わせる熱狂的なファンはオークションに出回ったチケットを物色し、数万円で買ったものまでいた。

 お金のない女子高生4人組は運よく4人中1人が当選することでチケットは手に入れたが、3人までなので全員で行けなかった。
 そのため、無事に当選した静子はみんなで行く前につきあっていた月子の弟である大学生の太陽と行く約束をすることにした。

 「ね。これがチケットなんだけど、来週の木曜日なんだ。natuのシークレットライブ絶対行こうよ。」
「木曜はなぁ・・・。だって俺のゼミって水曜と木曜だけは休めないんだよ。知ってるだろ?」
 「でもこんなチャンスそうはないと思うよ。200組限定だもん。」
 「ごめん。別の日なら行ったけど。ゼミの終わりに単位に関わってくる小テストがあるんだ。・・・そうだ。いつもの友達と行けば?」
 「だってこれで入れるの三人までなんだもん。だれかハチだよ。」
 「そうかぁ。でも御免。静子の誕生日は絶対あけとくからさ。」
 「本当にダメぇー?」
 「ホント、御免。」
 「うん・・・わかったよ。やっぱ木曜だからダメかなぁって思ってたし。」
 「じゃ今日はあの店でクレープおごるよ。な、行こう。」
 「あそこって、ブルーベリーカスタードのあそこ?」
 「そうそう。」
 「やったー。行こう行こう。」

 ということで、クレープ1枚でご満悦の静子であったが、四人組の中で一人行けなくなるのは誰にするかを決めなくてはならないはめになった。

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