委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 やっぱりあの子と委員長は同一人物だった。しかし、あまりにも印象が違い過ぎる。

 雨に濡れていたあの子は、確か眼鏡は掛けていなかったと思う。僕はあの子の綺麗に澄んだ、黒目がちな目に心が吸い込まれる気がしたんだ。

 そしてあの時のあの子は、何と言うか……儚げ?
そう、あるいは悲しそうで、放っておけない感じだった。そう言えば、実際に涙をひとしずく零していたと思う。

 ところが委員長は、氷のように冷たい表情で、まさに取り付く島もないという感じだった。でも声は……耳障りの良い声だったけども。


本当にどっちも同じ子なんだろうか……

 いや、それは間違いない。だって、あの日の事を僕が言ったら、彼女は『ごめんなさい』と言ったのだから。しかもその時の声だけは、ちょっと儚げだった気がする。


 ああ、いったいどっちの彼女が本物の桐島さんなんだろう。委員長の方が本物で、あの日の彼女は、勝手に僕が創り上げた誤ったイメージなんだろうか……


 そんな残念な結論に達しかけ、がっくりと肩を落としたら、その肩を誰かにガシッと掴まれた。


「振られちまったな?」


 振り向くと、阿部和馬君が白い歯を見せ、ニッて感じで笑っていた。

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