委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 それから二日が過ぎた。未だに俺は過去の記憶を何ひとつ思い出せないし、なぜ1年前の俺が夜学の学校案内を取り寄せたのかも解らないままだ。

 もっとも可能性が高いと思われるのは、俺が親、とりわけおふくろと仲違いをし、親からの援助が受けられなくなるから、というものだ。真琴から聞いた話だと、当時の俺はワルぶっており、そんな俺におふくろはイライラしていたそうだから、その線が濃厚だと思う。


 おふくろに聞けばわかる事だが、まだそれはしていない。その理由は、おふくろとやり合うのが面倒だからだ。

 俺は正直なところ、真琴とは違っておふくろをあまり恨んでいない。過去の記憶を取り戻せば、あるいはそういう気持ちになるかもだが、全部忘れてしまった今は、何をどう恨むかもわからないのだ。

 ただし、妙な薬で心身ともにコントロールされるのだけはまっぴらだから、薬は金輪際飲まず、しかしおふくろの前では飲んでる振りを続けている。つまり、わざと動作も喋り方もゆっくりとさせ、自分を“僕”と呼んで母親に従順な息子を演じ続けている。

 しかし、こんな無理な状態はそう長続きはしないだろう。近い将来、きっとおふくろにバレてしまう。であれば、やはりおふくろとはやり合わないといけないのだろうな。


 なんて事をつらつら思うが、実は今ひとつ真剣には考えられない。なぜなら、もっと気掛かりな問題があるからだ。それは……

 そう。ずばり、桐島さんとの事だ。

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