委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 私はたちまち身動き出来なくなってしまった。相原君にこんなにも力があるなんて思ってもみなかった。男の子だから当然なのだけど、私は相原君を見くびっていたんだ。


 そして相原君は、私の耳元で「帰らないで」と言った。懇願するように、悠斗と同じ声で……


「放して」


 私は一瞬、また錯覚に陥りそうになったけど、頭を振ってそれを振り切り、抵抗したのだけど、


「嫌だ」


と相原君は言い、私は強引に前を向かされてしまった。


「ちょっと、相原君……」


 間近に迫る相原君の顔。それは相変わらず整った綺麗な顔なのだけど、いつもとどこかが違うと思った。それは……

 目だ。私をやや見下ろす彼の目が、いつもの彼のトロンとしたそれではなく、怖いぐらいに鋭く、光を放っている。そしてそれは……悠斗の目と同じだ。


「俺は、友達なんかじゃ嫌なんだ」

「ちょっ、あいは……ん……」


 相原君が言った言葉の意味を考える間もなく、私の口は彼の熱く柔らかな唇で塞がれてしまった。

 頭を振って抵抗を試みたものの、相原君はそれを許してはくれず、彼の舌で口を強引にこじ開けられ、そのぬめっとした舌の侵入を許してしまった。

 悠斗しか知らない私は、他と比べようがないのだけど、この感じは、やっぱり悠斗と同じだと思う。もう錯覚を起こしちゃいけないと思ってたのに、相原君は悠斗じゃないのに、私はこの感じが……好き。もう何も、何も考えたくない……



「好きなんだ、君のこと。だから、友達だなんて言わないでほしい」


 長いキスの余韻で呆然とした私は、相原君の言葉を理解する以前に、ただうっとりとしていた。彼の低く囁くような、悠斗と同じその声に……

 少し遅れて彼の言葉を理解した私は、同時にそれを嬉しく思う自分の心にも気付き、彼に答えようと口を開きかけたのだけど……


「あんな男は忘れて、俺のものになってくれよ」


 相原君が、豹変した。

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