委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「暑いからフラッペにしようっと。どれにしようかなあ」


 渡辺さんが、メニューを見ながら弾んだ声で言った。緊張して、それどころではない僕とは裏腹だ。


「フラッペ?」

「かき氷よ?」

「ああ。じゃあ俺もそうしよう。お、この抹茶のやつ、色々乗ってて美味そうだなあ」


 阿部君も、渡辺さんが手に持つメニューを横から覗いてそう言った。顔を寄せ合って楽しそうにする二人を見ていたら、なんだか羨ましくなってしまった。僕も女子の誰かと、こんな風に仲良く出来たら楽しいだろうなと思った。

“誰か”と言っても、桐島さんしか思い浮かばないのだけど。


「それ、高いよ?」

「あ、そうだな。遠慮しとくか……」

「い、いいよ。遠慮なんかしないで、好きなものを頼んでよ」

「そうか? じゃあコレにするわ」

「じゃあ、あたしはコレ……」


 という感じで、それぞれ思い思いのフラッペを頼んだ。因みに僕はシンプルなイチゴのフラッペにした。


「最初に言っとくけどさ、あたし、本当は人の噂話って嫌いなんだからね?」

「そうかあ?」

「あ、そういう事言うなら言うのやめる……」

「そ、そう言わずに、お願いします」


 阿部君が余計なチャチャを入れ、渡辺さんがヘソを曲げそうになり僕は慌ててしまった。


「悪かった。今のは冗談だからさ、頼むよ沙織ちゃん」

「何が“沙織ちゃん”よ! でもいいわ、話してあげる。どうせ1組だった子はみんな知ってる事だし、玲奈のためだと思うし……」

「玲奈って?」

「桐島さんの下の名前よ」

「ああ……」


桐島玲奈さんっていうのか。可愛い名前だなあ……


「でも驚いたなあ。相原君が玲奈を好きになってくれたなんて……」

「えっ?」


 みんなから誤解されてるだろうなとは思っていたけど、渡辺さんからいきなりズバリと言われ、僕は思わず聞き返してしまった。

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