委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「悪いね、阿部君」

「いいって。俺もちょうどバイクを走らせたいと思ってたからさ。それより、何があった?」

「うん。かなり込み入った話だから、あっちで話さない?」


 俺があっちと言ったのは公園の中だ。阿部君には一通りの事を説明しようと思うが、どんなにはしょったとしても、路上の立ち話で済むとは到底思えなかったからだ。


「わかった」


 阿部君はバイクのエンジンを止め、公園の中まで押して行き、ベンチの背もたれに二人並んで腰掛けた。夕闇が迫る公園には、俺たちの他には誰もいなかった。

 何から話せばスムーズかなと考え、例の薬の話からする事にした。


「阿部君はさっき、俺の話し方とかがいつもと違うって言ったよね?」

「ああ。そう言う今も違うよな。どうなってんだ?」

「うん。今までの相原悠斗は、本来の俺じゃなかったんだ」

「なに?」

「おふくろから妙な薬、たぶん精神安定剤だと思うけどを飲まされ、その副作用で頭も体も回転が鈍かったんだ」

「なんでまた……」

「おふくろは、俺が元の俺に戻るのが嫌だったんだよ。田村悠斗に戻るのが……」

「たむら……ゆうと?」

「ああ。実は俺……」


 俺は阿部君にありのままを話した。本当の俺は、桐島さんの元カレで、“東高のバイク野郎”こと田村悠斗で、バイクで事故って記憶をなくし、未だに記憶が戻ってない事。

 おふくろの企みで苗字を変えられ、顔まで整形で変えられた事。この夏休みに桐島さんと急接近したが、まだ彼女に真実を明かしてない事などなど……

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