委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
後日談

~阿部Side~

 ああ、かったるいなあ。いつも思うが、夏休みって始まる前は長く感じるが、終わっちまうとあっけないよな……

 それにしてもあいつ、何考えてんだ?

 夏休みが明けた今日、俺は学校へ向かいながらある男の事で腹を立てていた。その男とは、同級生の相原悠斗だ。一週間ほど前、相原は俺のバイクに乗り、事故っちまった。だが、その事で腹を立ててるわけじゃない。

 その日、俺は相原が救急車で搬送された病院へ駆けつけたが、あいつの意識はなかった。それから3日後ぐらいにもう一度病院へ行ったが、相原は既に退院していた。それで俺はあいつにメールを送ったのだが、

『心配かけてすみません。バイクは必ず弁償します』

 って何だよ? バカ丁寧というかおざなりというか、およそ友達に返す言葉じゃねえよな。学校で会ったら文句言ってやんねえと……


 そんな事を考えながら歩いていると、前方にその相手、つまり相原の後ろ姿が見えた。さっそく文句を言ってやろうと、俺はあいつに駆け寄った。


「おい、相原」


 後ろから相原の肩を掴むと、あいつはくるっと俺を振り向いた。その顔は、額に絆創膏が貼られてはいたが、相変わらず整い過ぎとも言える綺麗な顔で……って、それは言わない方がいいかもだが、確かに相原だったのだが、なぜか俺をギロリと睨んだ。そして、素早い動きで俺の手を払うと、俺の胸ぐらを掴んできた。


「なんだ、てめえは!」

「あ、相原……」

「悠斗、やめて!」

「玲奈は下がってろ!」


 …………え?

 気付かなかったが、相原の横にいたのは委員長こと桐島さんだったらしい。彼女と気付かなかったのは、トレードマークとも言える黒縁の眼鏡を掛けてないからだ。

 それにしても“悠斗”“玲奈”なんて、いつの間にこの二人は名前で呼び合う仲になったんだ? それ以前に、相原のこの態度はなんだってんだよ……

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