委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「もう……」


 長いキスの後、私は悠斗に抱きすくめられている。


「なんだよ」

「自分にヤキモチ妬くのはやめてよ」

「そう言われてもなあ。“相原君”は別人にしか思えないんだよな」

「そんな事言ったって、現に今のあなたは相原悠斗なのよ? 田村悠斗じゃなくて」

「そうなんだけどさ、お前の口から“相原君”って言葉は聞きたくないな。ムカッとするから」

「わかった。もう言わない」

「よし、いい子だ」


 とか言われて、頭をなでなでされていたのだけど、


「そうも行かないわ」


 ある事に気付き、私は悠斗の肩のあたりを押して顔を上げた。


「ん?」

「だって、学校ではそう呼ぶしかないもの。“相原君”って……」

「ダメだね。学校だろうがどこだろうが、俺を悠斗と呼べ」

「クラスの人がいても?」

「そうだ」

「そんな、恥ずかしいよ……」

「ダーメ。言う事聞かないと、お仕置きだぞ?」

「い、いいもん。お仕置きされたって……」


 お仕置きって、さっきみたいな強引なキスだと思う。だとしたら、むしろ歓迎だもんね。私、悠斗のキスは大好きだから。


「本当にいいのか? お仕置きって、キス禁止だぞ?」

「……うそ!」

「ほんと」

「わかった。悠斗って呼ぶ」


 負けた。悔しいけど、見抜かれてる。

 それにしても悠斗って、相変わらず俺様でヤキモチ妬きでエッチで、甘えん坊さんだわ。相原君が悠斗だって事、本当に実感したのは今かもしれない……


「よし。それにしても楽しみだなあ」

「何が?」

「学校がさ。玲奈と同じクラスだなんて、夢のようだよ」

「そうね。一日中一緒にいられるんだもんね?」


 私は自分から悠斗の胸に顔を埋めた。思えば悠斗が東高の生徒だった頃は、当然だけど学校が終わるまで会えなくて、どんなに寂しかったか……

 これからは、朝から晩までずっと一緒にいられるんだもんね。本当に夢のようだわ。


「それにさ……」

「ん?」

「中央は共学だもんな?」

「そうだけど?」

「女子がいっぱいいるわけだろ? ふっふっふ……」

「ちょっと!」


 悠斗から離れて顔を見たら、ニタニタとイヤラシイ笑いを浮かべていた。


「浮気したらダメだからね!」

「あはは、冗談だよ」

「うそ。冗談には聞こえなかったもん」

「バカだなあ。俺が浮気なんかするわけないだろ? 玲奈にぞっこんなんだから。高校出たら、一緒に暮らさないか?」

「えっ?」


 なんか、どさくさ紛れにすごい事を言われたような……


「俺たちが高校を出たら、おふくろにアパートを用意してもらう。悪巧みした罪滅ぼしとして」


 悠斗ったら、もうそんな悪知恵(?)を働かせてたんだ……


「いいだろ?」

「う、うん」


 私の親を説得するのは大変そうだけど、何とかなると思う。ううん、何とかしちゃう。いざとなれば、喧嘩してでも……


 悠斗に抱きしめられ、私たちは再びキスを交わした。甘くとろけるようなキスを、虫の声を聴きながら……



※本編はこれで終わりですが、後日談を追加する予定です。よろしければそちらもお願いいたします。(2015.10.9 秋風月)

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