委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 沙織は自分の失言に気付いたらしく、手で口を押えたが、もう遅いと思うぞ。なぜなら、当の相原がピクッと反応したから。


「ごめん! わたしったら、余計なこと言っちゃった。でもね、この二人は知ってるの。東高の田村だったか田中だったか忘れたけど、暴走族の事を」

「ぼ、暴走族?」

「あ、違ったっけ?」


 あの時も違うって言ったろうが……


「とにかく、あんな男より相原君の方がずっといいって。あんな……」

「ストップ!」


 俺は慌てて沙織の話をやめさせた。放っておくと、何を言いだすやら……


「なによ?」

「もうやめとけって」

「なんで? いいじゃない、別に……」

「だから、本人の前で悪口はよせって言ってるんだ」

「へっ? 本人って……」

「俺、そんなに印象悪かったかな。反省しなきゃだな」


 相原がボソッと言った。てっきり俺は、相原は怒り心頭かと思ったが、意外に冷静なようだ。桐島さんもホッとしたようだが、沙織は……


「な、なに? 相原君、今なんて言ったの?」

「俺がその田村悠斗なんだ。田中じゃなくて。ついでに暴走族でもないし。今じゃ苗字も顔も変わっちまったけどね」

「…………嘘でしょ? ねえ、冗談だよね?」


 沙織は俺や桐島さんに同意を求めたが、俺も桐島さんも、ゆっくりと首を横に振った。


「うっそだあ。信じらんなーい!」


 沙織の叫び声が、店中に響き渡るのだった。

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