委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 沙織への説明が終わると、映画の開演時刻に間に合わなくなるとか言って、相原と桐島さんは急いで帰って行った。もちろん、仲良く手をつないで。


「はあー、びっくりだなあ。ねえ?」


 沙織は体の力が抜けたのか、テーブルにペタって感じで突っ伏している。


「ああ、そうだな。おまえのフラッペ、融けちまってるぞ」

「あ、うん。あの二人の話、小説にしてもいいかな?」

「小説? おまえ、小説書いてんの?」

「うん。下手っぴいだけどね」

「ふーん。ちょっと見直したかも」

「ねえ、和馬……」

「お、おまえ、いきなり名前で呼ぶなよ」

「いいでしょ? あんただって、わたしのこと沙織って呼ぶじゃん。おあいこよ」


 そういうの、おあいこって言うか?


「で、なんだよ?」

「わたしたちもさ、行かない?」

「どこへ?」

「映画……」

「映画ね…… しばらく観てないから、行くか?」

「うん、行こう行こう!」


 沙織は生き返ったように体を伸ばすと、すくっと立ち上がった。


「ほら、早くぅー」

「わかったって……」

「わたしたちもさ、手をつなごうか?」

「ちょ、おいおい……」



 この日から俺と沙織は付き合いだしてしまった。あまり長続きはしなかったが。

 相原とは前にも増してうまが合い、親友と呼べる間柄になった。大学が違ったため徐々に疎遠になっていったが、ある時思わぬ状況で再会した。なんと、最愛のフィアンセの兄として……

 ずっと先の話だけどね。


(おしまい)

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