委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「母さん……?」

「あ、ごめんなさい。真琴さんは一人っ子だから」

「そうみたいだね」

「ところで、どうしてそんな事を聞いたの?」


 まただ。母さんまでそこに拘るんだな。でも、なんでだろう……


「べ、別に深い意味はないよ。何となく聞いただけ」


 桐島さんの事は母に言いたくないので、僕は咄嗟にそう答えた。


「本当に?」

「うん、本当だよ」

「じゃあ、他にはどんな事を話したの?」


 話題が変わって助かったけど、他に何を話したのかと聞かれてもなあ。大した話はしてないわけで、


「大した話はしてないよ。肉ばかり食べちゃダメで、野菜をもっと食べろと言われたり……」

「それは確かにそうね。他には?」

「他に特には……」

「そう? まあ、いいわ。じゃあ……」


 と言って母は立ち上がりかけたのだけど……


「あ、そうそう。薬は持って来てる?」

「薬って?」

「安眠剤よ」

「あ、忘れた」


 と言ったものの、本当は忘れたのではなく、はなから持って来るつもりはなかったんだ。せっかくの旅行だから、無理に眠る必要はないと思って……

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