委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 家に帰り、自分のベッドに寝かされたが、俺の意識は混濁していた。

 かろうじて俺が憶えているのは、母に薬を飲まされた事と、「真琴さん、お願いね。なるべく早く戻るけど」と言い残した母の言葉ぐらいだった。


 どのくらい寝てたのだろう。僕は頭を誰かにそっと撫でられる感触を覚え、目を覚ました。母だろうか。あるいは真琴さんかな?


 目を開き、ぼんやりと映る目の前の人の顔に焦点を合わせたら……


「き、桐島さん!?」


 なんと、桐島さんだった。

 いや、そんなわけない。きっと僕はまだ眠っていて、夢を見てるに違いない。


「あ、ごめんなさい。髪の毛に寝癖がついてたから……」


えっ?

 その耳に心地良い声は、疑いようもなく桐島さんのそれだった。という事は……夢じゃない!?

 だったら、すぐに声を出したのは失敗だったなあ。桐島さんは、手を引くと同時にパッと僕から離れてしまった。少し顔を突き出せば、キス出来るぐらい顔が近かったのに……


「桐島さんは、どうしてここに……?」

「呼ばれたの。真琴さんという人に。それで、来ちゃった」


 そう言って、桐島さんはチロッと舌を出し、頬を赤く染めた。


ああ、なんて可愛いんだろう。桐島さんって、こういう仕草もするんだ……


「そうなんですか。でも、どうして真琴さんは桐島さんを呼んだんだろう。そもそも、なんで桐島さんに連絡出来たのかなあ」

「あの人、相原君の携帯で電話してきたの。相原君の看病をしてるんだけど、自分は用事があって帰るから、私に代わってほしいって。私がオッケーしたら、ここの住所と部屋の番号を教えてくれたの」

「ああ、そうなんだ。ごめんなさい。迷惑掛けちゃって……」

「ううん、迷惑だなんて……」


 そうだったのかあ。真琴さんめ、余計な事を……

 というのは嘘。真琴さん、グッジョブです!

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