委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
 うーん、どこで会ったんだろう。あるいは見たのかな。思い出せそうで、思い出せないなあ。


「誰か立候補する人はいませんか? いなければ他薦という事に……」


 待てよ。もし委員長の前髪がおでこに垂れて、眼鏡を外したと仮定すると……


「あっ、そうか!」

ガタン

「おお、相原君が立候補しましたね?」


 あの子だ。たぶん、あの子だと思う。帰りに傘を差さずに濡れながら帰って行った、すごく可憐な女の子。

 そうかあ。あの子は同じクラスの委員長だったんだ。こういうのを“灯台下暗し”って言うんだろうなあ。


「相原君」

「…………はい?」


 呆気なく彼女に再会出来た驚きと喜びに浸っていたら、なぜか僕は男子の委員長に名前を呼ばれ、それを中断せざるをえなかった。

 でも、何で僕が呼ばれたんだろう。というか、何で僕は立ってるんだ?


 気付けば周りのクラスメイトがみんな低く見え、つまり自分一人が立ち上がっているのだった。


「文化祭の実行委員、よろしく。女子の立候補はいませんか?」


えーっ!?

 なんと、僕は文化祭の実行委員に立候補した事になってしまったらしい。否定したいと思ったけど、男子の委員長は既に僕など眼中になく、今更言うのもどうかと思い、僕はすごすごと着席した。

文化祭の実行委員なんて、嫌だなあ……


「女子の立候補はいないようなので他薦で決めたいと思います。誰か適任と思う人はいますか?」


 という事になったけど、やはりクラスのみんなはシーンと静まり返ったままだった。

あ、そうか!


 僕は不意にある事を閃き、スッと右手を挙げた。

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