委員長に胸キュン 〜訳あり男女の恋模様〜
「相原君、誰かを推薦ですか?」

「はい」


 すぐに男子の委員長がそれに気付いてくれ、僕はおもむろに立ち上がった。


「誰を推薦しますか?」

「はい、えっと……」


 その女子の名前を僕は知らないので、名前を言う代わりにスッと腕を上げて指を差した。もちろん僕が指差したのは、教壇に立っている女子の委員長だ。

 そう。僕が咄嗟に閃いたのはその事だった。つまり、本当は億劫でやりたくない文化祭の実行委員だけど、もしあの子、すなわち女子の委員長と一緒にする事が出来たなら、きっと楽しい事もあるんじゃないかと……


「え? 桐島さんですか?」

「あ、はい」


へえー。彼女、桐島さんっていうんだあ。


 その時、なぜかは分からないのだけど、周囲がどよめいたような気がした。そして、


「桐島さんはクラス委員ですから、違う女子を推薦してください」


と、男子の委員長から言われてしまった。

 それじゃダメかな、とも思ったけど、一方ではそう簡単には引き下がりたくない気持ちもし、普段の僕ならあっさり諦めるところだけど、今回だけは頑張ってみたかった。


「そういう決まりですか?」

「いや、決まりという事は……」

「だったらいいじゃないですか。もし受け入れてもらえないなら、僕も実行委員を辞退します」


 そう僕はキッパリと言い切った。いつもは大人しくて人と言い争う事はしない僕だけど、今度ばかりはずいぶん頑張ってると思う。


 すると男子の委員長は女子の委員長である桐島さんの方を向き、二人で何やら話し合ったと思ったら、再び僕の方を向いた。


「じゃあ、女子の実行委員は桐島さんという事で……。二人ともよろしくお願いします」


と言った。

 僕は笑い出したいのをグッと堪えながら、コクっと頷いて桐島さんを見た。桐島さんも僕を見てはいたけど、相変わらず無表情のようだった。

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